相続人が多すぎて話し合いが進まない…。そんなケースで悩む方に向けて、解決策や手続きの流れをわかりやすく解説します。目次を見て必要なところから読んでみてください。
相続人が多すぎて話し合いが進まないケースの全体像と背景
遺産分割協議がなかなか進まないケースの中でも、「相続人が多すぎる」ことが原因となっている場合は少なくありません。特に兄弟姉妹が多い家庭や、代襲相続が発生している家庭では、相続人の人数が10人を超えることもあり、それに比例して話し合いも複雑になります。
「相続人が多すぎる」ことで遺産分割協議が進まない理由
相続人の数が多いと、次のような問題が起こりやすくなります:
✅ 連絡が取りづらい相続人がいる
✅ 各人の主張が異なるため、合意がまとまらない
✅ 協議書への署名・押印の収集に時間がかかる
✅ 疎遠な相続人同士の感情的対立がある
遺産分割協議は、相続人全員の合意がないと成立しません。たった1人でも反対すれば協議が進まなくなり、家庭裁判所での調停や審判へ進む必要が出てきます。
なぜ72歳という年齢で相続人が多数になるのか:世代・代襲相続・兄弟姉妹・養子の視点
72歳で亡くなった方が相続人を多く抱える背景には、以下のような事情が関係していることがあります。
- 兄弟姉妹が多い戦前・戦後世代である
 - 先に亡くなった子どもがいて、その子ども(孫)が代襲相続人になる
 - 離婚や再婚歴があり、前妻・後妻それぞれに子どもがいる
 - 養子縁組によって相続人が増えている
 
このように、親族関係が複雑な場合ほど、法定相続人の数も増え、全員との協議が必要になるため、話し合いが進みにくくなります。
相続人多数のケースで生じやすい具体的なトラブル(連絡不能・意見対立・協議書取得困難)
相続人が多いと、以下のような問題が実際に発生しやすくなります。
| 発生するトラブル例 | 内容と影響 | 
|---|---|
| 行方不明・音信不通の相続人がいる | 協議が進まないため、家庭裁判所に不在者財産管理人を申し立てる必要がある | 
| 相続人の間で意見が真っ二つに割れる | 感情的対立が深まり、法的解決が必要になる | 
| 協議書に署名・押印を集めるのが大変 | 郵送によるやり取りが複数回におよび、数ヶ月かかるケースも | 
このようなリスクを想定し、早い段階で専門家に相談し、相続人を整理しながらスムーズな協議体制を整えることが重要です。
相続人が多い場合の初期対応:調査と整理 ✅
相続人が多数いる場合、まず最初にすべきことは「誰が相続人かを正確に把握すること」です。感情や立場の違いによって話し合いが混乱しないよう、法的に定められた相続人を客観的に確定する作業が出発点となります。
相続人調査のステップ:戸籍・除籍・改製原戸籍の収集
相続人を確定するためには、以下のような戸籍の調査を行います。
✅ 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍
✅ 被相続人の子・孫・兄弟姉妹の戸籍
✅ 代襲相続が発生する場合は、その子や孫の戸籍
これらを役所で取得することで、全相続人のリストが明確になります。相続人数が10人以上に増える場合、この戸籍調査だけで数週間〜数ヶ月かかることもあるため、早めの対応が肝心です。
相続人整理~代襲相続・孫・甥姪・養子の確認
相続人が多数になる原因の多くは、「代襲相続の発生」や「兄弟姉妹・甥姪まで相続が広がっている」ことです。
| ケース | 相続人の広がり | 
|---|---|
| 被相続人の子が既に死亡していた | 孫が代襲相続人として相続人になる | 
| 独身・子なしで死亡した場合 | 兄弟姉妹や甥姪が相続人になる | 
| 養子縁組がある | 実子と同様に養子も法定相続人になる | 
このように、一見すると関係の薄そうな親族も相続人になる場合があるため、戸籍を丁寧に読み解く必要があります。
相続人多数時に活用できる「法定相続分を前提に案を示す」手法
相続人の人数が多い場合、遺産の分け方をめぐって全員が意見を言い出すと収拾がつきません。そこで有効なのが、「まずは法定相続分に基づいた分割案を提示する」という方法です。
✅ 法定相続分を前提にした案を提示
✅ 修正の希望がある場合は、それぞれ個別に意見を聴取
✅ 全体調整は代表者や第三者を通じて実施
このようにすると、“最初からゼロベースで話し合う”よりも合意形成が早く進む傾向にあります。
多数の相続人による遺産分割協議を円滑に進めるための実務ポイント ✅
相続人の人数が多い場合、遺産分割協議をどのようにスムーズに進めるかが最重要課題となります。人数が増えれば増えるほど「意見の違い」「連絡の困難さ」「手続きの煩雑さ」が増すため、効率的に進めるための工夫が欠かせません。
遺産分割協議書の署名・押印を集める際の工夫(証明書形式/郵送・オンライン)
相続人が全国・海外に散らばっているケースでは、遺産分割協議書の署名と実印押印を集めること自体が一苦労です。以下のような工夫が有効です。
✅ 協議書を証明書形式(各人別の書式)で作成する
✅ PDFをメールで共有し、印刷・押印・郵送してもらうフローを整える
✅ 可能であれば、ZoomやLINEで口頭の意思確認も行う
こうした手順を整えておけば、全員が一堂に会さなくても協議が進行可能です。
意見調整と意思決定ルール:相続人をグルーピング/代表者を立てる/現金払いを提案する
多数の相続人がいる場合、「全員と毎回やり取りする」ことは非現実的です。そのため、以下のような工夫が現場で有効です。
- 家族単位でグルーピングして代表者を選出する
 - 財産が不動産中心なら、現金化して法定相続分で分配する提案をする
 - 一部の相続人に遺産を集中させ、その代わりに代償金を支払う調整を行う
 
これらの方法により、「自分の取り分が明確」であり「公平感のある提案」になれば、協議が前に進みやすくなります。
話し合いが決裂したら検討すべき代替手段(調停・審判)
全員の合意が得られず、どうしても協議がまとまらない場合は、家庭裁判所への申し立てが必要です。
| 手続き名 | 内容と特徴 | 
|---|---|
| 家庭裁判所での調停 | 第三者(調停委員)を交えて話し合いを行う。合意を目指す手続き。 | 
| 審判 | 調停でも合意できなかった場合、裁判官が強制的に分割方法を決定する。 | 
こうした手続きに進むと時間も費用もかかるため、できるだけ早期に合意を目指す努力が重要です。そのためにも、相続人の中で冷静な立場の人を窓口役とし、信頼できる専門家を交えて進めることが望まれます。
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多人数相続の典型的事例とシミュレーション ✅
実際に相続人が10人以上に膨らむケースでは、どのような流れで相続が進むのかを把握しておくことが重要です。ここでは典型的な事例を元に、具体的な相続人構成と対応策をシミュレーション形式で解説します。
相続人数10人以上になった場合の進行イメージとポイント
✅ 相続人が10人以上になると、連絡・確認・書類取得・合意形成のすべてに時間がかかります。
✅ 被相続人の兄弟姉妹や代襲相続が関係する場合、法定相続分も複雑化しやすいため、財産の分け方に不満が出やすくなります。
【相続の進行ステップ】
- 被相続人の戸籍調査(出生から死亡まで)
 - 相続人10名以上のリストアップと関係整理
 - 財産調査(不動産・預金・借金)
 - 分割案のたたき台を作成(専門家に依頼することが多い)
 - 各相続人に説明・合意形成
 - 遺産分割協議書の取りまとめ
 - 相続登記や預金解約などの実行
 
この流れをすべて完了するまでに、半年〜1年以上かかるケースも珍しくありません。
被相続人72歳のケースで想定される相続人パターン(子・子の代・兄弟姉妹・甥姪など)と課題
【事例】
72歳で亡くなった被相続人Aさんには以下のような親族関係がありました。
- 妻B(既に死亡)
 - 長男C(存命)
 - 次男D(既に死亡)→ 代襲相続人として孫E・Fが該当
 - 長女G(存命)
 - 弟H(存命)
 - 妹I(既に死亡)→ 子J・Kが甥姪として代襲相続
 
このように、子・孫・兄弟・甥姪が入り混じることで相続人が一気に9〜10人規模になることがあります。
課題としては:
✅ 相続分の調整が困難(孫や甥姪が不満を持ちやすい)
✅ 連絡先が不明な人が含まれる場合が多い
✅ 書類を取りまとめる代表者が不在になりがち
こうしたケースでは、一人で対応しようとせず、専門家の介入を早期に依頼することが合理的です。
具体的な手続きを時系列で整理:相続人調査 → 財産調査 → 協議 →登記・解約
| 時期 | 行うべき手続き | 解説 | 
|---|---|---|
| 第1週〜第4週 | 戸籍取得・相続人調査 | 法務局・役所で戸籍収集。代襲相続の有無も確認。 | 
| 第2週〜第6週 | 財産目録の作成 | 不動産・預金・借金・株式などの有無を確認。 | 
| 第4週〜第12週 | 分割案の作成と調整 | 法定相続分をベースに案を出し、相続人の意見調整。 | 
| 第12週以降 | 協議書作成・署名・手続き実行 | 協議書に全員が署名・押印後、不動産登記・預金解約へ。 | 
相続人が多いほど各プロセスに時間がかかるため、1つ1つの段階で計画的に進めることが成功の鍵です。
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話し合いをスムーズにするための予防的対策と実務的アドバイス ✅
相続人が多数になることが予想される家庭では、相続が発生する前からの準備が極めて重要です。また、相続が始まってからも、手順や体制を整えることで、トラブルの回避と協議の円滑化が期待できます。
被相続人が生前にできること(遺言書・相続人一覧整理・財産目録作成)
被相続人が元気なうちに以下の準備をしておくと、相続発生後の混乱を大きく減らせます。
✅ 遺言書の作成
→ 法的効力をもつ公正証書遺言が特におすすめ。分配の意思を明示できる。
✅ 相続人一覧と関係図の整理
→ 家系図形式で親族関係を明文化すると、相続人調査がスムーズに。
✅ 財産目録の作成
→ 所有している不動産、預貯金、借金、株式などのリストを作っておく。
これらの対策によって、話し合いを「ゼロから始める」必要がなくなり、争いの芽を未然に摘むことができます。
相続発生後にすぐやるべきこと:相続人全員に案内/財産目録を共有/専門家相談
実際に相続が発生したら、初動が肝心です。以下の3点を速やかに実行しましょう。
- 相続人全員に連絡し、状況を共有する
→ 疎遠な親族にも丁寧に案内し、協議に参加できる体制を整える。 - 財産目録を全員に提示する
→ 財産の全容が明らかになると、不信感や疑念を減らせる。 - 第三者(司法書士・弁護士など)に早期相談する
→ 客観的な助言や調整役がいると、感情的な対立を防ぎやすい。 
✅ この3点が揃えば、「情報不足」「不公平感」「放置されている不満」などが原因で起こるトラブルの多くを未然に防ぐことができます。
多数相続人の場合に頼れる専門家・サービス(司法書士・弁護士・相続コーディネーター)
相続人が多い場合は、個人で全体を取りまとめるのは困難です。そこで役立つのが以下の専門家です。
| 専門家 | 主な役割 | 
|---|---|
| 司法書士 | 戸籍調査、相続関係説明図の作成、登記手続き代行など | 
| 弁護士 | 意見対立の調整、調停・審判対応、法的トラブルの予防 | 
| 相続コーディネーター | 財産調査、相続人間の調整、関係者間の連絡管理 | 
✅ こうした専門家を活用することで、公平性・中立性が保たれた形で協議が進められ、相続人の心理的負担も軽減されます。
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よくある質問Q&A:相続人が多すぎるケースの疑問に答える ✅
相続人が多数いる場合、手続きや対応で疑問が出てきやすくなります。ここでは、特に相談の多い代表的な質問に答えます。
「相続人が行方不明・連絡取れない場合はどうなる?」
相続人の中に行方不明者や音信不通の人がいる場合は、以下の手続きを検討します。
✅ 不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる
✅ 相続放棄や限定承認をしていない限り、その人の同意がないと協議が成立しないため注意
✅ 長期間所在が不明な場合は、失踪宣告の制度を活用するケースもあり
こうした法的手段により、相続手続きを進めるための道筋をつけることが可能です。
「相続人が多数いると相続放棄・限定承認の判断はどう変わる?」
相続人が多い場合でも、一人一人が個別に相続の意思を判断することが原則です。つまり:
- 他の相続人が放棄しても、自分は相続することが可能
 - 限定承認も原則として相続人全員の合意が必要
 
特に限定承認は、全員で一致しないと利用できない制度なので、人数が多いと実質的に使いにくい点に注意が必要です。
「相続人が多数で遺産に大した価値がない場合も手続きをしないといけないの?」
たとえ遺産の価値が少なくても、相続登記や名義変更などは原則として必要です。特に不動産が残っている場合は、以下のような影響があります。
| 遺産が小額でも必要な理由 | 内容 | 
|---|---|
| 登記しないと処分できない | 売却・贈与・担保設定などができなくなる | 
| 固定資産税が発生する | 名義が変わらないと、相続人の代表に請求が届く | 
| 次世代にさらに相続人が増える | 時間が経つほど、相続人が倍増し協議困難に | 
✅ 少額でも「きちんと終わらせておく」ことが、将来のトラブル回避に直結します。
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