相続の話を出すと「欲深い」と思われないか…その不安を、言い方・家族会議・不動産相続・法的準備で実務的に解消します。目次を見て必要なところから読んでみてください。
- 「相続の話=欲深い」という誤解の正体【心理と日本的文脈】
- 法的な下支えを先に整えると揉めにくい
- 公正証書遺言と付言事項の活用ポイント
- 家族信託/任意後見/死後事務委任の使い分け
- 生前贈与:暦年課税と相続時精算課税の注意点
- 代償金・特別受益・寄与分の基本知識
- 自宅・農地・収益物件の評価と換価の考え方
- 共有名義のリスクと解消ステップ
- 空き家対策(管理・売却・賃貸・リフォーム)
- 専門家・不動産会社・家族会議ファシリの活用
- 費用相場と依頼のタイミングの目安
- 中立性を守る言い方:「専門家に一緒に確認しよう」
- ケース1:介護貢献に偏りがある兄弟姉妹の調整
- ケース2:二次相続を見据えた現金と不動産の配分
- ケース3:再婚家庭・連れ子がいる場合の配慮
- 5分版:現状確認→親の希望→次の一歩
- 15分版:論点→優先順位→宿題→期日設定
- メッセージ例(LINE/メール/手紙)
- 親が嫌がるときの切り出し方は?
- 強硬な兄弟がいて話が進まない場合の対処
- 言い出し損にならないための工夫
- 話し合いメモ(誰と・何を・いつまでに)
- 共有フォルダの構成例と保存ルール
- 相談先リストと初回連絡文テンプレ
「相続の話=欲深い」という誤解の正体【心理と日本的文脈】
「相続や遺産分割の話を切り出すと欲深いと思われないか」——その不安は自然な感情です。ですが、放置すれば争族リスクが高まり、家族関係と資産の両方が傷つきます。ここでは日本的な価値観を踏まえ、予防としての相続の話し方を、安心して始められる形に整理します。
タブー化の背景(死とお金・長幼序・体面)を理解する
まずは「言いにくさ」の正体を言語化します。日本では死とお金の話は同時にタブーになりやすく、さらに「長幼序(年長者優先)」や「体面(世間体)」がブレーキになります。ここを理解しておくと、相手の反応に過度に傷つかず、議題を“人”ではなく“仕組み”に向ける準備ができます。
- ✅ 死の回避傾向:不吉と捉え、話題自体を避けがち
- ✅ 金銭の忌避感:「お金の話=欲」へ短絡しやすい
- ✅ 長幼序の影響:親や年長者のメンツを守る言い回しが必要
- ✅ 体面の配慮:親戚・近所の目を意識しやすい
具体的には、最初から金額や取り分に触れず、介護・手続き・連絡網の整備といった中立的テーマから入ると、心理的抵抗が下がります。私は日々のご相談で、「順番は“感情→段取り→お金”」が穏やかに進む定石だと感じています。
【次の一歩】
- ✅ 家族が反応しそうな“言いにくさのポイント”を3つメモ
- ✅ 最初の話題は段取り(連絡先・書類)から入ると決める
「欲」ではなく「予防」へ—争族リスクと実害の可視化
相続の話は取り分の主張ではなく、事故を防ぐ“予防医療”です。話し合いを後回しにすると、口座凍結で生活費が出せない、空き家が荒れて固定資産税だけが出ていく、共有名義で売れない——こうした実害が現実に起きます。感情論を避けるには、起きうる不利益を具体化して共有するのが近道です。
見える化の例(家族会議の冒頭で共有)
- ✅ 金融口座:名義人死亡後は一時凍結、葬儀費や公共料金の支払いに支障
- ✅ 不動産:共有名義は意思統一が必須。修繕・売却・賃貸の都度、全員の合意が必要
- ✅ 税・費用:相続税の申告期限や空き家の維持費が無風で消えることはない
- ✅ 時間:感情が固まる前の方が、現実的な代替案を出しやすい
結論:相続の話は“欲の会議”ではなく“被害を減らす会議”です。まずは「困らないための準備を一緒に考えたい」というIメッセージで、主語を自分に置くことが大切です。
【次の一歩】
- ✅ 家計・不動産・手続きの不利益リストを家族共有用に1枚化
- ✅ 冒頭のひと言をIメッセージで練習(例:「私が困らないように段取りを確認したいです」)
公平と平等の違いを先に合意する
相続で揉める根っこは、平等(同額)と公平(事情を踏まえた妥当)の価値基準のズレにあります。議題に入る前に、どちらを優先するかを合意しておくと、結論がブレにくくなります。ここを曖昧にしたまま数字の話に入ると、話が堂々巡りになりがちです。
基準の違いを1枚で共有
観点 | 平等(同額) | 公平(事情考慮) |
---|---|---|
定義 | 兄弟姉妹で等分する考え方 | 介護や生前贈与、居住実態など事情を反映 |
相続の具体例 | 不動産と預金を均等に分ける | 介護貢献者へ代償金を上乗せ、居住者が不動産取得など |
メリット | 早く決まりやすい、感情の対立を回避しやすい | 納得感が高い、将来の不満の火種を減らす |
注意点 | 不動産の等分は現実運用が難しい(共有化リスク) | 根拠の提示が必要、合意形成の手間が増える |
合意のコツ
- ✅ 先に「今回は公平重視でいい?」と基準の合意を口頭で取る
- ✅ 公平を選ぶなら、介護記録・支出の控え・居住の実態を証拠化
- ✅ 不動産は等分より“誰が持つか”+代償金で設計するのが実務的
ポイントは、先に“ものさし”を一本化すること。それだけで家族会議の温度が下がり、建設的な代替案が出やすくなります。
【次の一歩】
- ✅ 家族に配る「平等か公平か」チェックシートを作成
- ✅ 不動産を誰が持つかの初期案と、代償金の目安レンジをメモ
切り出しの最適タイミングときっかけ作り【例文付き】
「相続や遺産分割の話、言い出すと角が立ちそう…」そんなときはタイミングときっかけを味方にします。身近な出来事や通知、ニュースをフックにすれば、“欲”ではなく“予防”の会話としてスムーズに始められます。私たちめーぷる岡山中央店(星川あきこ)が、現場で使える言い回しを絞ってご紹介します。
介護開始・入退院・納税や固定資産税通知をトリガーに
身近な「手続きイベント」は、自然に相続の話へ橋渡しできるきっかけです。先に段取りと負担軽減の話題から入るのがコツです。
よくあるトリガーと第一声の例
トリガー | 目的 | 第一声テンプレ |
---|---|---|
介護が始まった | 介護体制と費用の見通し | 「介護の段取り表を一緒に作りたいです。ついでに、将来の手続きも整理しておきませんか?」 |
入退院 | 連絡網・書類の整備 | 「緊急連絡先や保険の書類を一度確認させて。相続の話というより“困らない準備”をしたいです」 |
固定資産税通知 | 不動産と維持費の共有 | 「税の案内が来たので、家の名義や維持費も整理しませんか。誰が何を担当するかだけ決めましょう」 |
納税・年末調整 | 口座・書類の棚卸し | 「今年の控除を見直すついでに、重要書類と連絡先をまとめたいです。後で私が困らないように」 |
小さく始めるコツ
- ✅ 金額より段取りから話す
- ✅ 「私が不安なので確認させてください」とIメッセージで主語を自分に
- ✅ 15分だけ、など時間を区切る
【次の一歩】
- ✅ 家族カレンダーに「固定資産税通知の週=家族ミーティング15分」を予約
- ✅ 緊急連絡先・重要書類の一覧表たたき台を作成
法改正やニュースをフックにする自然な入り方
社会の話題をクッションにすると、個人攻撃に聞こえないため受け入れられやすいです。ポイントは、事実→自分の不安→一緒に確認の順で伝えること。
使えるフレーズ集
- ✅ 「最近ニュースで相続手続きのトラブルを見ました。私も不安で…“今のうちに段取り”だけ一緒に確認しませんか?」
- ✅ 「制度が変わると聞きました。詳しくはまだ分からないけれど、家の名義や口座の所在だけ把握したいです」
- ✅ 「空き家の管理が話題ですね。うちも維持費が心配なので、家の今後の使い方を相談させてください」
ニュースフックの型(短文メモ)
- 事実(見た・聞いた)
- 感情(自分の不安を短く)
- 提案(一緒に確認/15分だけ/段取りから)
【次の一歩】
- ✅ 家族用LINEに記事URL+上記の“事実→感情→提案”の3行セットで投げる
- ✅ 次回集まりの議題を1つだけ(例:重要書類の保管場所)に絞る
家族LINE/対面/電話での第一声テンプレ
伝え方は媒体に合わせて調整します。文字は短く要点、対面はクッション言葉、電話は結論先出しが基本です。
媒体別テンプレ
【LINE(短文+行間でやさしく)】
- 「固定資産税の通知きたね。私、将来の段取りが不安なので“重要書類の場所だけ”今度15分で教えてください」
- 「ニュース見て心配に。取り分の話ではなく“困らない準備”をしたいだけです。今週どこかで少し話せますか?」
【対面(クッション→主旨→合意)】
- 「急に重い話じゃないから安心してね。私が困らないように“連絡先と書類の整備”だけ一緒にさせて。今日はそこまででいい?」
- 「お金の取り分の話はしません。まず家の名義や鍵の場所だけ、私がメモします」
【電話(要点を先に)】
- 「3分だけください。私の不安解消で、重要書類と連絡先を教えてほしいです。別日に15分だけ時間ください」
- 「今度の通院の前後で、段取り表を一緒に作らせてください。私が書きます」
仕上げのひと言(合意を柔らかく)
- ✅ 「今日はここまで。次回は“連絡先の最終確認”だけお願いします」
- ✅ 「助かりました。私が議事メモを家族LINEに流しますね」
【次の一歩】
- ✅ 媒体別テンプレをスマホの定型文に登録
- ✅ 家族会議はアジェンダ1つ・15分・議事メモ送付の3点セットで固定
角が立たない言い回しテンプレ集(遺産・不動産・預貯金)
「相続の話は角が立つ」——多くのご家庭で共通の悩みです。そこで主語を自分に置き、親の希望を尊重し、断られても関係を傷つけないための言い回しをまとめました。今日からそのまま使える実務テンプレとしてお役立てください。
Iメッセージで「自分事」に変換する
相手を責めず、自分の不安や希望を短く伝えるのがコツです。理由→お願い→期限の3点セットにすると受け入れられやすくなります。
基本フォーム
- 「私が困らないように、先に段取りだけ確認したいです」
- 「私の理解が追いつかなくて…。15分だけ書類の場所を教えてください」
- 「私の家計管理のために、固定資産税の流れを知っておきたいです」
テーマ別Iメッセージ集
テーマ | ねらい | そのまま使える一言 |
---|---|---|
遺産の全体像 | 口論を避けつつ把握 | 「私が後で慌てないよう、全体の“種類だけ”を一覧にしたいです」 |
不動産 | 維持・名義の整理 | 「私の段取り用に、家の名義と鍵・書類の保管場所をメモさせてください」 |
預貯金 | 凍結リスクに備える | 「私の支払い管理のため、口座のある銀行名だけ控えさせてください」 |
連絡網 | 緊急時の対応 | 「私が連絡で迷わないよう、かかりつけと親族の連絡先を一度まとめたいです」 |
【次の一歩】
- ✅ 「理由→お願い→期限」の3行テンプレをスマホに登録
- ✅ 面談の冒頭は“私が”で始めると決めておきます
「親の希望を尊重」軸のクッション言葉
最初に親の意思の尊重を明言すると、“取り分の話ではない”と伝わります。クッション言葉は前置き→主旨→範囲限定の順で。
クッション言葉テンプレ
- 「まず、親の希望を一番に考えたいです。今日は取り分の話ではなく、“希望の確認”だけさせてください」
- 「決めるのはお父さん(お母さん)です。私たちは準備と記録だけ手伝わせてください」
- 「意見は分かれても、親の希望を土台に考えたいです。今日は“何を残したいか”の整理から」
尊重を示す確認質問
- 「通帳や家のこと、将来どうしておきたいですか?」
- 「誰に何を任せたいですか?負担が偏らない形で考えます」
- 「避けたいことはありますか?たとえば売却はしたくない等」
範囲を限定して安心感を出す
- 「今日は15分だけ、“重要書類の所在”の確認までで区切ります」
- 「数字は出しません。“やってほしくないこと”だけ聞かせてください」
【次の一歩】
- ✅ 親の希望メモ(残したい/任せたい/避けたい)をA4一枚で作成
- ✅ 次回議題は「希望の確認」のみ。金額の話はしないと宣言
断られた後の再提案フレーズ
拒否は想定内。否定せず受け止め、選択肢を提示し、負担を下げるのが再提案のコツです。時間・範囲・媒体を変えて再アプローチします。
断り文への返答の型(受容→配慮→代替案)
- 「今は気が進まないのですね。分かりました。では私だけで“書類の在処メモ”を作って、あとで確認だけお願いします」
- 「重く感じますよね。じゃあ今日はやめて、来週“5分電話”で連絡先だけ教えてください」
- 「取り分の話はしません。LINEで“連絡網のたたき台”を送るので、気づいたときに直してもらえますか?」
状況別・再提案テンプレ
相手の反応 | よくある言い分 | 再提案フレーズ |
---|---|---|
面倒・多忙 | 「今バタバタしてる」 | 「分かりました。私が“チェックリスト”を作るので、後で✅だけお願いします」 |
不吉・縁起 | 「縁起でもない」 | 「確かに気になりますよね。今日は“保険証券の置き場所”だけ。数字や取り分は一切触れません」 |
疲労・体調 | 「また今度」 | 「お体第一です。では“私が聞き取り→家族LINEに議事メモ”で負担ゼロにします」 |
議論が怖い | 「揉めたくない」 | 「同じ気持ちです。“決めない会”にします。現状の把握と希望の聞き取りだけ」 |
切り返しの最後に添える安心ワード
- 「今日はここまでにします。次は私から短いメモだけ送りますね」
- 「急ぎません。“困らない準備”だけ少しずつ進めます」
【次の一歩】
- ✅ 断られたとき用に3つの代替案(時間短縮/範囲限定/媒体変更)を事前に決めておく
- ✅ 家族LINEに議事メモテンプレを保存し、更新は✅チェック方式に統一
家族会議の段取りとアジェンダ【チェックリスト】
「話し合いが長引く」「毎回同じところで止まる」——その原因の多くは段取り不在です。今日は、関係者と資料をそろえ、短時間で結論に近づく型をお渡しします。めーぷる岡山中央店(星川あきこ)が実務で使うチェックリストと台本を、そのままお使いください。
事前準備(関係者・資料・論点)と役割分担
会議は集まる前に8割終わらせるのがコツです。誰が何を用意するかを明確にし、45〜60分で終える設計にします。
関係者の定義
- ✅ 相続人全員(配偶者・子・代襲相続人を含む)
- ✅ キーパーソン(介護担当・家計管理者・居住者)
- ✅ 必要に応じて専門家(第三者の進行役が有効)
持参資料の最小セット
- ✅ 重要書類リスト(保険証券・登記簿・権利証・固定資産税通知など)
- ✅ 財産の概況メモ(預金の“銀行名のみ”、不動産の“所在・用途”)
- ✅ 介護・家計の実費メモ(レシート写真でOK)
役割分担のおすすめ
- 進行役:時間管理と議題の切り替え
- 書記:議事録(誰が・何を・いつまでに)を要点で記録
- タイムキーパー:各議題の終了宣言
- 事務担当:資料収集・共有フォルダ管理
準備チェック表(配布用)
項目 | 具体内容 | 担当 | 期限 |
---|---|---|---|
参加者確定 | 相続人・同席者の連絡先、参加可否 | 進行役 | 会議1週間前 |
会場・接続 | 自宅/オンラインURL・録音可否の確認 | タイムキーパー | 3日前 |
資料収集 | 固定資産税通知、登記簿、保険証券写し | 事務担当 | 3日前 |
議題草案 | 論点3つまでに絞る | 進行役 | 3日前 |
配布 | 事前資料をPDFで共有 | 書記 | 2日前 |
【次の一歩】
- ✅ 参加者・資料・役割の3点セットを家族LINEに流す
- ✅ 議題は最大3つに限定して事前共有します
論点整理:不動産評価・介護貢献・生前贈与の棚卸し
揉める原因は情報の非対称です。数字に弱くても大丈夫。“何を、どこまで、どう決めるか”を1枚でそろえます。
論点マップ(会議用ひな形)
論点 | 必要資料 | 確認観点 | 目指すアウトプット |
---|---|---|---|
不動産評価 | 固定資産税通知、登記簿、現況写真 | 自宅/空き家/収益の区分、老朽度、共有名義の有無 | 「誰が持つか」方針と、代償金の目安レンジ |
介護貢献 | 介護記録(通院同行・費用)、シフト表 | 時間・費用・精神的負担の実績 | 公平基準(上乗せや役割分担の合意) |
生前贈与 | 通帳履歴の概要、贈与の意図メモ | 生活補助か贈与か、学費等の扱い | 取り扱いルール(特別受益に含める/含めないの方針) |
会議アジェンダ(45分版)
- 目的確認(5分):「困らない準備と公平の合意がゴール」
- 不動産(15分):現況→方針(取得者/売却/賃貸)→代替案
- 介護貢献(10分):実績確認→公平基準の言語化
- 生前贈与(10分):棚卸し→取り扱いルールを暫定合意
- 宿題と期日(5分):ToDo・責任者・期限の確定
【次の一歩】
- ✅ 上の表をA4一枚にして配布
- ✅ 写真や通知書はスマホで撮影→共有フォルダでOK
合意形成ルール(議事録・合意文書・期日設定)
ルール先行で温度が下がります。決め方を先に決めてから中身へ。
運営ルール
- ✅ 議題3つ・時間厳守・延長なし
- ✅ 結論は「合意/保留/差戻し」のいずれかで明記
- ✅ 感情論になったらタイムアウト2分(深呼吸)
議事録の要点(書式極小)
- 議題/決定事項/保留理由/ToDo(誰が・いつまでに)/次回日時
合意メモのひな形(家族内)
- 表題:相続準備に関する合意メモ(第1回)
- 参加者:氏名(続柄)
- 合意:
1)不動産Aは長男が取得方向、代償金は○〜○万円の範囲で再協議
2)介護費の立替は次回までに実費集計
3)生前贈与の扱いは教育費は除外/その他は要確認 - ToDo:担当/期限
- 署名:参加者全員(写真で保管可)
期日設定のゴールデンルール
- 期限は1〜2週間内、宿題は各自1つまで
- 次回予定をその場で確定(日時・場所)
【次の一歩】
- ✅ 議事録テンプレを家族LINEのノート機能に固定
- ✅ 合意メモに写真添付(通知・登記)で証跡を残します
✅会議後のフォロー(ToDo・責任者・期限)
会議後の24時間が勝負です。熱が冷める前に記録→配布→着手まで一気通貫で進め、次回の摩擦をゼロに近づけます。
24時間アクション
- ✅ 議事メモ配信(写真1枚+要点3行)
- ✅ ToDoの担当者ダイレクト送信(個別LINEでやさしく催促)
- ✅ 共有フォルダの最新化(ファイル名は「日付_内容_担当」)
フォローの見える化ボード(家族用)
ToDo | 担当 | 期限 | 進捗 | 備考 |
---|---|---|---|---|
登記簿取得(不動産A) | 次男 | 10/10 | ☐/☑ | オンライン請求 |
介護費の集計(月次) | 長女 | 10/12 | ☐/☑ | レシート写真OK |
銀行リスト作成(銀行名のみ) | 配偶者 | 10/15 | ☐/☑ | 支店名は不要 |
代償金の目安レンジ試算 | 進行役 | 10/18 | ☐/☑ | 相場幅で可 |
催促のやさしい言い回し
- 「私の段取りの都合で、10/12までに“介護費メモ”だけお願いできますか?」
- 「今回は“決めない会”の続きです。資料だけ共有フォルダに入れてもらえたら十分です」
完了宣言の習慣
- ✅ 完了報告はチェックマーク「✅」+一言でOK
- ✅ 次回議題は新規1つまで(膨らませない)
【次の一歩】
- ✅ 見える化ボードを家族LINEの固定メッセージに設定
- ✅ 次回日程のカレンダー招待を今すぐ送る
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法的な下支えを先に整えると揉めにくい
「話し合いはできたけど、形に残っていない」——ここで止まると相続手続きや不動産の処分が進みません。最小限の法的ツールを先に整えるだけで、口座凍結・共有名義の硬直・税の負担増を避けやすくなります。めーぷる岡山中央店(星川あきこ)が、現場で使う決め順と要点をまとめます。
公正証書遺言と付言事項の活用ポイント
結論:最初の1枚は“公正証書遺言”にしましょう。公証人が作成するため形式不備のリスクが低く、家庭裁判所の検認も不要です。さらに付言事項(想いのメッセージ)を入れると、遺産分割の受け止め方がやわらぎます。
使いどころ
- ✅ 不動産の承継先を一本化したい(共有回避)
- ✅ 代償金のメドを遺言で示しておきたい
- ✅ 相続人以外(内縁・孫・介護者)へ一定の配慮を示したい
付言事項に入れると効く要素(例)
- 公平の考え方(介護・学費支援への評価)
- 不動産の方針(売却/居住/賃貸の優先順位)
- 家族への感謝と配慮(感情のトゲを取る効果)
作成の段取り(最短ルート)
- 家族会議で骨子合意(誰が不動産を持つか、代償金の方向性)
- 財産目録のたたき台を家族で作る(正確性は公証人と詰める)
- 公証役場へ事前相談→必要書類の指示に沿って準備
- 証人2名を手配(親族等の制限に注意)
- 付言事項は私的メッセージとしてA4半枚を目安に
【次の一歩】
- ✅ 骨子メモ「不動産の承継先/代償金の目安/付言の要点」をA4一枚化
- ✅ 公証役場に事前予約し、必要書類のチェックリストを受け取る
家族信託/任意後見/死後事務委任の使い分け
判断能力の低下前後で使える制度が変わります。迷ったら「管理→判断→死後」の時間軸で整理しましょう。
目的/場面 | 家族信託(信託契約) | 任意後見(将来型委任) | 死後事務委任 |
---|---|---|---|
主な狙い | 資産の管理・承継設計を柔軟に | 判断力低下後の代理を公的に | 死後の実務(葬儀・届出・解約) |
使うタイミング | 判断力が十分あるうち | 判断力が低下する前に契約→発効は後 | 死亡後に委任事項を実施 |
向いている財産 | 不動産・預金・受益権など | 生活費支払い・手続き全般 | 役所手続・火葬・遺品整理の初動 |
強み | 受益権でコントロール、共有回避・二次相続設計 | 家庭裁判所の関与で公的安定性 | 相続開始直後の実務空白を埋める |
注意点 | 設計力が要る(受託者の負担) | 監督人選任後に発効、費用がかかる | 遺産分割権限はない(実務限定) |
組み合わせ例
- 不動産の承継動線を家族信託で設計+日常の支払いは任意後見で担保+葬儀や解約は死後事務委任で空白なし。
- ひとつで万能にせず、役割を分担させるのが安全です。
【次の一歩】
- ✅ 「管理したい財産」「任せたい人」「死後の指示」を3列で書き出す
- ✅ 制度の重なりと穴を確認し、足りない部分だけ契約で補う
生前贈与:暦年課税と相続時精算課税の注意点
贈与は“早いほど得”と決めつけないでください。制度は改正が続き、持ち戻し(相続時に加算)の扱いも見直されています。数字だけで判断せず、目的→資産の種類→将来設計の順に。
項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
---|---|---|
仕組み | 毎年の贈与額に応じて課税(基礎控除あり) | まとまった贈与を相続時に清算(贈与時は申告必須) |
向き/不向き | 小口贈与・資金教育など段階的移転に向く | 不動産の一括移転など、早めに所有者を替えたいとき |
メリット | 柔軟、年ごとの裁量が効く | 名義変更が早い、将来の管理がシンプル |
注意点 | 持ち戻しの対象期間が延びる傾向があるため要確認 | 選択後の変更が困難、相続時に一括合算され得る |
判断の軸
- ✅ 不動産を早く移す必要があるか(管理・売却の俊敏性)
- ✅ 将来の税負担と現金余力(贈与税/登録免許税/不動産取得税など付随費用)
- ✅ 制度改正の影響(加算期間や控除枠の見直し)
【次の一歩】
- ✅ 目的を1行で決める(例:「空き家管理を子に一本化」)
- ✅ 想定プランを暦年版/精算課税版の2案で費用比較(概算でOK)
代償金・特別受益・寄与分の基本知識
「平等」と「公平」をつなぐのがこの3点です。言葉は難しくても、使い方はシンプル。不動産×兄弟姉妹の局面で威力を発揮します。
3つのキーワードの役割
- 代償金:不動産を誰かが丸ごと取得する代わりに、他の相続人へ金銭で調整する仕組み
- 特別受益:生前の支援(住宅取得資金・結婚費用など)を遺産分割で考慮する考え方
- 寄与分:介護・事業手伝い・資産維持など遺産の増加に貢献した人を上乗せ評価する仕組み
現場での当てはめ方(不動産ありの例)
- 誰が住み続けるか(居住・学区・通院など生活実態)
- その人が取得するなら代償金の目安レンジを設定(固定資産税評価や相場を参考に幅で)
- 兄弟の生前支援(特別受益)と介護貢献(寄与分)をリスト化
- 遺言(付言)で考え方を言語化し、合意メモに落とす
合意のための“証拠の形”
- ✅ 介護の通院・費用メモ、写真・日付
- ✅ 生前支援の振込記録やメモ
- ✅ 不動産の現況写真・修繕履歴(価値維持の手がかり)
【次の一歩】
- ✅ 「代償金レンジ」「特別受益リスト」「寄与分メモ」をA4三点セットで共有
- ✅ 次回会議の冒頭で“公平の基準”を再確認し、数字は幅で合意
不動産相続で起きやすい誤解と回避策
「相続の不動産は高く売れるはず」「共有にしておけば公平」——実は、その思い込みが換価の失敗や家族間対立を招きます。ここでは自宅・農地・収益物件の評価の見方、共有名義のリスク、そして現実的な空き家対策までを、めーぷる岡山中央店(星川あきこ)の実務目線で整理します。
自宅・農地・収益物件の評価と換価の考え方
不動産は種類ごとに価値の決まり方が違います。「一律で相場×面積」では当たりません。評価軸と換価の筋道を分けて考えるのが安全です。
種別 | 主な評価の見方 | 換価の基本方針 | つまずきポイント | 回避策 |
---|---|---|---|---|
自宅 | 近隣成約事例、路線価、固定資産税評価、築年・修繕履歴 | 居住継続か売却かを生活動線で先に決める | リフォーム費を上乗せ前提で考えてしまう | 見積は「現況売却」「最低修繕」「フル改修」の3本で比較 |
農地 | 農地種別・立地・転用の可否・耕作者の有無 | 転用可否で価値が激変、近隣農家への承継も検討 | 転用前提の希望価格で長期化 | 役所確認→農地委員会の流れを先に把握、買い手層を限定 |
収益物件 | 収益還元(賃料−経費)/利回り、空室率、修繕計画 | 賃貸継続か売却かをキャッシュフロー基準で判断 | 満室時の利回りだけで判断 | 実質利回り(修繕積立・原状回復・空室)で再計算 |
誤解を避ける3原則
- ✅ 評価(値付けの根拠)と価格(交渉の結果)を混同しない
- ✅ 時間の価値を入れる(維持費・固定資産税・空室損)
- ✅ 現況写真・修繕履歴を整えて「買い手の不安」を先に潰す
【次の一歩】
- ✅ 種別ごとに評価資料の束(通知書・写真・見積)をA4一枚に集約
- ✅ 自宅は「居住継続/売却/賃貸」の三択メモを家族で仮決め
共有名義のリスクと解消ステップ
共有=公平ではありません。共有は意思決定の分散であり、売却・賃貸・担保設定・大規模修繕のたびに全員の合意が必要です。結果、時間と関係性のコストが膨らみます。
共有名義の主なリスク
- ✅ 売却・賃貸・リフォームに全員同意が要る
- ✅ 誰か1人の不同意で手続きが停滞
- ✅ 固定資産税・修繕費の負担割合が曖昧化
- ✅ 持分の第三者売却で見知らぬ共有者が入る可能性
解消の王道ステップ
- 方針確認:誰が住む/持つ/手放すのかを先に決める
- 代償金のレンジ設定:評価は「幅」で合意(例:1,800〜2,200万円)
- 単独化:遺産分割協議書で取得者を一本化
- 換価分割:全員同意で売却→代金を按分
- 持分買取:取得希望者が他の持分を買い取り
- 最終手段:共有物分割の法的手続(時間・費用負担を要意)
実務のコツ
- ✅ 共有のまま修繕・管理規約を先に紙で合意
- ✅ 管理者1名と意思決定期限を置く
- ✅ 代償金は分割払い/期限付で合意しやすくする
【次の一歩】
- ✅ 共有を続けるなら決裁ルール表(誰が何日で決めるか)を作成
- ✅ 単独化シナリオと換価分割シナリオを並行試算して家族合意
空き家対策(管理・売却・賃貸・リフォーム)
空き家は放置が最も高くつく資産です。目的別に4つの選択肢を短期・中期で組み合わせましょう。
選択肢 | 目的 | 初期費用感 | 手間 | 向くケース | 要注意点 |
---|---|---|---|---|---|
管理(巡回・草刈り・通風) | 劣化防止と近隣配慮 | 低〜中 | 中 | 売却準備中・判断保留 | 放置期間が長いほど総コスト増 |
売却(現況/残置あり可) | 維持コストの即時停止 | 低(整備なし)〜中 | 低 | 使わない・資金化が目的 | 残置物の扱いと境界確認 |
賃貸(戸建賃貸/定期借家) | 収益化と維持 | 中 | 中〜高 | 立地・設備が平均以上 | 原状回復費・空室リスク |
リフォーム(用途変更含む) | 価値の再創造 | 中〜高 | 高 | 売れる立地・長期保有前提 | 投下額が回収不能の恐れ |
優先順位の決め方
- ✅ 誰が使うか(居住・二拠点・使わない)
- ✅ 資金余力(修繕・税・管理費の耐性)
- ✅ 立地と築年(賃貸・売却の現実性)
即動できるミニ計画
- ✅ 30日プラン:残置物の要/不要仕分け→簡易清掃→現況写真→査定依頼(売却と賃貸の両睨み)
- ✅ 90日プラン:境界・設備のリスク洗い出し→最小修繕で試算→意思決定会議(売却/賃貸/保有の三択)
【次の一歩】
- ✅ 空き家の月次コスト表(固定資産税・管理・光熱基本料)を作成
- ✅ 売却と賃貸のダブル査定で、数字の裏付けをもって家族会議へ
第三者を挟むとスムーズになるケース
「家族だけだと感情が前に出て進まない」——そんなときは中立の第三者を入れるだけで驚くほど前進します。ここでは、専門家・不動産会社・家族会議ファシリの使いどころと段取り、そして費用相場と頼み時を、めーぷる岡山中央店(星川あきこ)が実務目線でまとめます。
専門家・不動産会社・家族会議ファシリの活用
第三者は「決めてくれる人」ではなく、決め方を整える人です。役割を明確にすると、家族の負担が軽くなります。
誰を、何のために呼ぶか
立場/機能 | 主な役割 | こういう時に | 成果物・アウトプット | 依頼のコツ |
---|---|---|---|---|
専門家(士業) | 法制度・書式・権利関係の確定 | 遺言/相続人/持分/贈与の整理 | 遺言案、契約書、合意文案、手続き表 | 骨子は家族で先に合意→文書化を依頼 |
不動産会社 | 価格レンジ・売却/賃貸の選択肢提示 | 不動産の方針が決まらない | 査定書、販売/賃貸プラン、費用表 | 現況写真と課題を先に共有(境界・雨漏り等) |
家族会議ファシリ | 進行・合意形成・対立の温度管理 | 感情が強く議論が空回り | アジェンダ運営、合意メモ、ToDo表 | 議題は3つまで・時間配分を先に共有 |
金融機関窓口 | 口座・相続手続の段取り案内 | 凍結前後の実務 | 必要書類リスト、スケジュール | 代表者を決め、同じ人が窓口に通う |
実務のポイント
- ✅ 家族で目的(何を決めたいか)を1行で揃えてから依頼
- ✅ 役割が重なる部分(例:家族信託×遺言)ほど第三者の設計力が活きます
- ✅ オンライン同席を活用(家族と専門家で同じ画面を見る)
【次の一歩】
- ✅ いま詰まっている論点を法・価格・感情のどこかに仕分け
- ✅ 仕分け結果に合わせて誰を呼ぶかを決め、30分の初回面談を予約
費用相場と依頼のタイミングの目安
費用の見通しがあると、家族の合意が早くなります。ここでは目安レンジと、動くべき「頼み時」を整理します。
項目 | 目安レンジ | 含まれやすい内容 | 頼み時(トリガー) | 失敗回避のコツ |
---|---|---|---|---|
遺言(公正証書) | 数万円台後半〜十数万円+実費 | 文案整理、公証役場手続、証人手配 | 不動産の承継先を一本化したい時 | 付言事項で考え方を言語化 |
家族信託の設計 | 十数万〜数十万円台 | 受託者設計、契約書、登記連携 | 管理者を元気なうちに決めたい | 目的→対象→体制の順で固める |
相続手続の代行 | 数万円〜 | 相続人調査、戸籍収集、名義変更 | 手続が家族の手に余る | 何を自分で、何を外注か線引き |
不動産の査定・売却 | 査定は無料〜、仲介手数料は成功報酬 | 査定、販売計画、広告 | 空き家化・維持費増を感じた時 | 現況のままと軽整備後の両案比較 |
家族会議ファシリ | 数万円〜/回 | 進行、合意メモ、ToDo設計 | 初回会議前または膠着時 | 議題3つ・時間厳守を事前合意 |
タイミングの合図
- ✅ 固定資産税通知が来た月
- ✅ 入退院・介護開始の直後
- ✅ 空き家の維持費が気になり始めたら
【次の一歩】
- ✅ 依頼前に目的・範囲・期限をA4一枚にまとめる
- ✅ 見積は最低2社で比較し、アウトプット例(文案・査定書)を確認
中立性を守る言い方:「専門家に一緒に確認しよう」
第三者を挟む提案は、中立性が命です。相手の「負けたくない」気持ちを刺激しないクッション言葉を添えます。
そのまま使えるフレーズ
- 「意見が割れているというより、情報が足りない気がします。専門家に一緒に確認して、私たちの仮説が合っているか見ませんか?」
- 「取り分の話はしません。決め方だけ整えるために、30分だけ進行役に入ってもらいましょう」
- 「売る前提ではなく、売る/貸す/保有の三択で数字だけ出してもらいませんか?」
- 「親の希望を土台に、文書の形だけ専門家に整えてもらいましょう」
合意を取りやすくする小ワザ
- ✅ 提案は“あなた案”でなく“第三案”として出す
- ✅ 時間を限定(初回30分)し、延長は合意ベースに
- ✅ 専門家同席後は合意メモ+ToDoを24時間以内に配信
【次の一歩】
- ✅ 上のフレーズを家族LINEの定型文に登録
- ✅ 初回はオンライン面談でハードルを下げる(資料は事前共有)
事例で学ぶ「欲深い」と言われない進め方
「欲深いと思われたらどうしよう…」と怖さが先に立つと、話し合いは止まります。ここでは実在を想起できる3つの典型ケースをもとに、言い方・順番・証拠の形で解決に近づける方法を整理します。めーぷる岡山中央店(星川あきこ)の現場感覚で、角を立てずに前へ進む型をお届けします。
ケース1:介護貢献に偏りがある兄弟姉妹の調整
介護の比重が偏ると、「取り分」の話に触れた瞬間に温度が上がります。事実の見える化→基準の合意→数値は幅でが鉄則です。
状況の骨子(例)
- きょうだい3人。長女が通院同行・買い物支援を継続、長男は遠方、次女は単発支援。
- 自宅不動産あり。母は居住継続を希望。現金は限定的。
進め方の型
- 事実の棚卸し(責めない表現)
- 「私が把握したいので、通院回数と費用だけメモにしました」
- 公平の合意(平等≠公平の共有)
- 「今回は“公平基準”を先に決めませんか。介護の実績はどう扱うか、考え方だけ整えたいです」
- 解の提示は“幅”で
- 代償金レンジ:50〜80万円上乗せなど、金額は幅+再確認の期日をセット
見える化テンプレ(配布用)
項目 | 実績/数値 | 参考資料 |
---|---|---|
通院同行回数(直近6か月) | 18回(長女15・次女3・長男0) | カレンダー/診察券 |
立替費用 | 57,000円(交通費・日用品) | レシート写真 |
自宅の現況 | 築35年、雨漏り履歴なし | 現況写真 |
合意までの台本
- 「取り分を上げてほしいではなく、“公平の基準をどうするか”を一緒に決めたいです」
- 「数字は今日決めません。幅だけ置いて、1週間後にもう一度」
【次の一歩】
- ✅ 介護実績の月次サマリ(回数・時間・費用)をA4一枚で共有
- ✅ 公平基準メモ(上乗せの有無・根拠)を作り、幅と期日で仮合意
ケース2:二次相続を見据えた現金と不動産の配分
一次相続で全てを等分すると、二次相続(もう一方の親の相続)で税・手間が跳ねることがあります。現金の流動性と不動産の管理負担を分けて設計します。
状況の骨子(例)
- 配偶者と子2人。自宅+小口現金。配偶者の体力は十分だが運転はやめた。
- 二次相続で自宅の扱いがネックになりそう。
配分の考え方(一次→二次の視点)
観点 | 一次での方針 | 二次に効くメリット |
---|---|---|
現金 | 配偶者中心に厚め配分 | 生活費・医療・納税に即応できる |
自宅 | 配偶者が居住継続前提で取得 | 住み替え・売却の自由度が上がる |
将来の換価 | 代償金は分割払いも可 | 子の家計に無理が出にくい |
家族会議の言い回し
- 「今は暮らしの安定が最優先。現金は生活費用に厚め、家は居住継続を前提に整えませんか」
- 「二次相続の負担を軽くするため、家は将来売却も視野。その時の代償金は幅で置いておきましょう」
ミニシミュレーション(例)
配分案 | 配偶者 | 子A | 子B | 代償金の扱い |
---|---|---|---|---|
案1(流動重視) | 現金多め+自宅取得 | 現金少なめ | 現金少なめ | 自宅売却時に清算 |
案2(公平加味) | 自宅取得 | 現金+将来の代償金受領 | 現金+将来の代償金受領 | 5年以内に分割払い |
【次の一歩】
- ✅ 一次→二次の2段階で配分案を2つ作る(流動重視/公平加味)
- ✅ 代償金は金額ではなく“清算方法”(期限・分割・利息なし)で合意
ケース3:再婚家庭・連れ子がいる場合の配慮
家族構成が複雑なほど、手続きと感情の両面ケアが不可欠です。誰に何の権利があるかを最初に透明化し、感謝と配慮は付言に、決め方は第三者同席が安全です。
状況の骨子(例)
- 再婚。配偶者と連れ子、前婚の子も存在。自宅と少額の金融資産。
- 自宅に現配偶者と連れ子が居住中。
衝突が起きやすいポイント
- 相続人の範囲の誤解(誰が法律上の相続人か)
- 居住継続と換価のバランス(住む人と持つ人が一致しない)
- 生前の支援の扱い(教育・生活費など)
角を立てない進め方
- 権利関係の透明化
- 「まず“誰が相続人か”を一緒に確認させてください。今日は決めません、把握だけです」
- 居住の安定を優先
- 自宅は居住者が取得+他相続人へ代償金の方向で検討
- 付言で感情の段差をならす
- 「これまでの支援への感謝」「居住継続の理由」を付言事項に明記
- 第三者の進行
- 初回からファシリ同席で議題3つ・時間厳守を宣言
合意メモのひな形(再婚家庭向け)
項目 | 方針 | 宿題 |
---|---|---|
自宅 | 居住者(現配偶者)取得方向 | 代償金レンジ提示 |
現金 | 均等分配方向 | 具体額の確認 |
生前支援 | 教育費は特別受益対象外の暫定合意 | 記録の確認 |
文書化 | 付言事項に想いを記載 | 素案作成 |
使えるフレーズ
- 「取り分の主張の前に、“居住の安定を最優先”で段取りを決めませんか」
- 「感情は付言で丁寧に残します。数字は今日、幅だけ置きましょう」
【次の一歩】
- ✅ 相続人の範囲表をA4で作成(続柄・連絡先)
- ✅ 付言草案を半ページで作り、第三者同席で表現を整える
迷ったときの台本(5分版/15分版)
「どこから話せばいいか分からない」——そんなときは台本をそのまま読むだけで十分です。時間を区切り、段取り→希望→次の一歩へと進めると、角を立てずに合意の種をまけます。家族の温度に合わせて5分版と15分版を使い分けてください。
5分版:現状確認→親の希望→次の一歩
短時間で“合意の入口”まで運ぶための超ミニ台本です。要点は言い切り・範囲限定・次回予約。
5分台本(読み上げ用)
- 現状確認(30秒)
「私が困らないように、重要書類の場所だけ今日確認させてください」 - 親の希望(2分)
「取り分の話はしません。お父さん(お母さん)が“どうしておきたいか”だけ教えてください」
・居住の希望(今の家に住み続けたい/売却も視野 など)
・避けたいこと(共有名義/片付けの負担 など) - 次の一歩(2分)
「今日はここまで。次回は“連絡先リストの最終確認”だけ、15分ください」
・ToDo:連絡先・鍵・通帳の所在をメモ
・期限:1週間以内の都合が良い日時
使いどころ
- ✅ 入退院の前後・固定資産税の通知週
- ✅ 家族が忙しい・重い話が苦手
言い回しの置き換え
- 「念のための確認です。数字は出しません」
- 「私がメモします。難しいことは後で専門家に当たります」
15分版:論点→優先順位→宿題→期日設定
少し腰を据えて“決め方”まで合意する台本です。議題3つ・時間厳守でテンポよく。
15分台本(進行役用)
0〜1分:目的共有
- 「今日は“困らない準備”と“公平の考え方”の確認が目的です」
1〜4分:論点の提示(最大3つ)
- 不動産の方針(居住/売却/賃貸)
- 介護の負担と費用の扱い
- 生前支援(学費など)の取り扱い
4〜8分:優先順位の合意
- 「今は“居住の安定”を最優先にしませんか」
- 「公平は“介護の実績を考慮”の方針で良いですか」
8〜12分:宿題の配布
- ToDo(誰が・何を・いつまでに)を各自1つまで
例)登記簿の取得/介護費の集計/銀行名のリスト化 - 証拠の形を指定(写真・レシート・通知書)
12〜15分:期日設定と次回予約
- 「次回は1週間後、同時刻で15分。議題は“連絡先最終確認”のみ」
- 「今日の結論は“合意/保留/差戻し”で書記が記録します」
チェック表(配布用)
項目 | 決めたこと | ToDo | 担当 | 期限 |
---|---|---|---|---|
不動産の方針 | 例:居住継続方向 | 現況写真・固定資産税通知の共有 | 長女 | ○/○ |
介護の扱い | 例:実績を公平に反映 | 通院回数と費用の月次メモ | 長男 | ○/○ |
生前支援の整理 | 例:教育費は除外 | 銀行振込の確認 | 次女 | ○/○ |
言い切りフレーズ
- 「今日は決めないことも“決め事”です(保留理由を記録)」
- 「数字は幅で置いて、次回に再確認します」
メッセージ例(LINE/メール/手紙)
媒体別に温度と情報量を調整します。事実→自分の不安→提案の順で。
LINE(短文・既読想定)
- 「固定資産税の通知きたね。私が困らないように“重要書類の場所だけ”今度5分で教えてください」
- 「取り分の話はしません。“困らない準備”で、来週15分だけもらえますか?」
メール(履歴・共有前提)
件名:相続の段取り確認のお願い(15分)
本文:
- 事実:最近ニュースで相続手続の混乱を見ました。
- 不安:私も連絡先や書類の所在が分からず、急な時に不安です。
- 提案:取り分の話はしません。5分版台本で「所在確認→希望→次の一歩」だけさせてください。来週○/○(○)19:00〜はご都合いかがでしょうか。
- 範囲:重要書類・連絡先・鍵の場所まで。数字は触れません。
手紙(保存性・配慮重視)
前略
あなたの希望を最優先に、私が困らないよう段取りだけ整えたいと思っています。取り分の話ではなく、
1)重要書類の所在 2)連絡先 3)住まいの希望
の三点を5分で確認させてください。まずは日程の候補を二つ、同封のメモに書いて教えていただけると助かります。
草々
結びのひと言(全媒体共通)
- 「決め方だけ整えます。数字は幅で置きます」
- 「私がメモを作り、家族LINEに共有します」
【次の一歩】
- ✅ 5分版・15分版をスマホの定型文に登録
- ✅ 次回日時をその場で確定し、議題は1つだけに絞る
よくある質問Q&A
「相続の話を切り出したいけれど、親が嫌がる・兄弟が強硬・自分だけ損をするのが怖い」——そんな不安に実務で効く答えをまとめました。言い方・段取り・証拠の形で、静かに前へ進めます。めーぷる岡山中央店(星川あきこ)の現場視点でお答えします。
親が嫌がるときの切り出し方は?
主語は“私”に。範囲は“段取りだけ”。時間は“短く”。この3点で不吉・面倒のハードルを下げます。
言い方の型(受容→目的→範囲)
- 「この話、重く感じるのは分かっています。」
- 「私が困らないように、段取りだけ整えたいです。」
- 「今日は“重要書類の所在”の確認だけ、5分で。」
効きやすいクッション言葉
- 「取り分の話はしません。」
- 「決め方だけ整えます。」
- 「数字は出しません。場所と連絡先だけ。」
小さく始める段取り
- ✅ 5分の所在確認→15分の希望ヒアリングの二段階
- ✅ 私がメモする(親は“答えるだけ”にする)
- ✅ 次回予約をその場で1件だけ
断られた場合の再提案
- 「では私が仮メモを作ります。後で✅だけお願いします。」
- 「電話で3分、場所だけ口頭で。」
強硬な兄弟がいて話が進まない場合の対処
意見の強さ=正しさではありません。まずルールを先に合意し、第三者と証拠の形で温度を下げます。
先に決める3ルール
- 議題は3つまで(脱・横滑り)
- 結果は合意/保留/差戻しで明記
- 発言は1回1分、反論は要約から(「今の要点は〇〇」)
「強硬」への切り返しテンプレ
- 「賛成/反対の前に、根拠の“資料”だけ共有ください。」
- 「今日は決めない会で、現状把握まで。数字は幅で置きます。」
- 「進行役を第三者に任せ、私たちは事実整理に集中しませんか。」
効く“見える化”ツール
- ✅ 現況写真・固定資産税通知(不動産)
- ✅ 介護回数・費用の月次メモ(寄与分のたたき台)
- ✅ 合意メモ(誰が・何を・いつまでに)
それでも膠着する時
- 「この論点は“差戻し”。期限を切って資料で再会しましょう。」
- 「進行だけ第三者に預けます。30分だけ一緒に確認を。」
言い出し損にならないための工夫
動いた人が損をしない設計にしましょう。役割の見える化・費用の記録・成果の共有で、自然と評価が整います。
仕組み化のポイント
- 役割表:進行・書記・タイムキーパー・事務の4役を明確に
- 費用メモ:立替や移動費は日付+金額+写真で簡易記録
- 時間の可視化:通院同行や手続き時間は合計分で月次共有
“ありがとう”を仕組みに変える
- ✅ 付言事項に感謝と公平の考えを書き残す
- ✅ 代償金は“幅”+分割払いで合意しやすく
- ✅ 合意メモの末尾に「評価の方法」(記録を根拠に)を記載
言い回しテンプレ
- 「私の負担の見える化のため、立替は写真で残します。清算は月末で。」
- 「決め方だけ整えておきます。数字は次回“幅”で再確認します。」
- 「成果は家族LINEに要点3行+✅で共有します。」
ミニチェックリスト(保存版)
- ☐ 役割表を家族LINEのノートに固定
- ☐ 立替・時間の月次サマリをA4一枚で共有
- ☐ 合意/保留/差戻しの区分を議事録に明記
- ☐ 代償金・寄与分・特別受益は根拠資料と一体で管理
まとめ代わりの持ち帰りシート【無料テンプレ】
「やることが多くて手が止まる…」そんなときに家族で共通の型があると進みます。ここでは今日から使える話し合いメモ・共有フォルダ構成・相談先リストと初回文例を一つに。めーぷる岡山中央店(星川あきこ)が現場で使う迷わない道具を置いておきます。
話し合いメモ(誰と・何を・いつまでに)
会議は誰が・何を・いつまでにを1枚で。合意/保留/差戻しを分け、数字は幅で置くのがコツです。
A4ひな形(コピペでOK)
- 目的:困らない準備/公平の基準確認
- 日付:__/__ 場所:__(対面/オンライン) 時間:__分
- 参加者:______(続柄) 進行:__ 書記:__
議題 | 合意/保留/差戻し | 決めたこと(幅で) | ToDo | 担当 | 期限 |
---|---|---|---|---|---|
不動産の方針 | __ | 例:居住継続方向/代償金200〜250万円 | 現況写真と固定資産税通知の共有 | __ | __ |
介護の扱い | __ | 例:実績を公平に反映 | 通院回数・立替費の月次表 | __ | __ |
生前支援 | __ | 例:教育費は特別受益対象外 | 振込記録の確認 | __ | __ |
- 次回予約:__月__日(__)__:__〜(議題は1つだけ:__)
- 共有方法:家族LINEノート/Googleドライブ【リンク】
- メモ末尾の言い切り:「今日はここまで。数字は幅で再確認」
【使い方の小ワザ】
- ✅ 進行・書記・タイムキーパー・事務の4役を固定
- ✅ 終了時に✅だけで完了報告(例:「登記簿取得✅」)
共有フォルダの構成例と保存ルール
探し物をなくす仕組みが家族の温度を下げます。階層は浅く、名前は日付からが鉄則です。
フォルダ構成(例)
- 01_連絡先
└ 2025-09-23_家族連絡網.xlsx - 02_重要書類(写真のみ可)
└ 2025-09-23_保険証券_表裏.jpg/固定資産税通知.pdf - 03_不動産
└ 2025-09-23_現況写真_外観1.jpg/登記簿_自宅.pdf - 04_介護・費用
└ 2025-09_通院回数.csv/2025-09_立替レシート.zip - 05_合意メモ
└ 2025-09-23_第1回合意メモ.docx - 99_テンプレ
└ 話し合いメモ_ひな形.docx/議事録_型.docx
保存ルール(家族で合意)
- ✅ 日付_内容_担当で命名(例:2025-10-01_現況写真_長女)
- ✅ 写真は全体→問題箇所→計器(メーター等)の順で3枚以上
- ✅ 追記は上書き不可。v1→v2で版管理
- ✅ 個人情報は閲覧権限を家族のみに限定
チェックリスト(初期設定)
- ☐ 共有リンクのアクセス権を確認
- ☐ フォルダ構成を家族LINEに画像で共有
- ☐ 「99_テンプレ」に今日のこのシートを保存
相談先リストと初回連絡文テンプレ
誰に何を頼むかが決まると前に進みます。目的別に最初の30分を取りに行きましょう。
相談先の役割と準備物(目安)
相談先 | 役割 | こんな時に | 準備物(最小限) |
---|---|---|---|
公証役場/士業 | 遺言・付言、相続人/持分の確定 | 共有回避・代償金の方向を固めたい | 財産概況メモ、本人確認、家族関係図 |
家族信託の専門家 | 不動産・預金の管理設計 | 判断力が十分なうちに体制を作る | 目的メモ、対象資産リスト、候補受託者 |
司法書士 | 名義変更・登記・書式 | 不動産の単独化や換価分割へ | 登記簿、固定資産税通知、合意メモ |
不動産会社 | 査定・売却/賃貸の選択肢 | 空き家の方針を比較したい | 現況写真、境界・設備の課題メモ |
金融機関窓口 | 口座・手続き動線 | 凍結前後の段取りを把握 | 口座の銀行名一覧、代表者の委任状 |
家族会議ファシリ | 進行・合意形成 | 感情が強く議論が空回り | 議題3つ、時間配分、参加者連絡先 |
初回連絡文テンプレ
【電話(30秒)】
- 「進め方だけ確認したく、30分の相談枠をお願いします。取り分の話はしません。必要書類を教えてください。」
【メール】
件名:相続準備の進め方について初回相談希望(30分)
本文:
- 背景:家族内で決め方の整備を進めています。
- 相談範囲:不動産の承継先の方向性と付言の表現確認。
- 添付予定:財産概況メモ、家族関係図(簡易)。
- 候補日時:__/__(__)__:__、__/__(__)__:__。
- 返信先:______。よろしくお願いいたします。
【LINE(家族→専門家同席の了承取り)】
- 「決め方だけ整えたいので、専門家に一緒に確認しませんか。30分だけ、議題は3つまでです。」
【同席の合意フレーズ(家族内)】
- 「今日は決めない会。合意/保留/差戻しでメモします」
- 「数字は幅で置き、次回に再確認」
【次の一歩】