相続人の一人と連絡が取れない…。そんな状況で手続きを止めてしまうと、重大なトラブルにつながるかもしれません。目次を見て必要なところから読んでみてください。

目次
  1. 現代相続で「相続人と連絡が取れない」ときに確認すべきポイント
    1. ① 遺産分割協議が無効になるリスクを理解する
    2. ② 相続人の所在確認は戸籍の附票からスタート
  2. まず試したい!相続人との連絡方法
    1. 住所の確認方法:戸籍の附票取得手順
    2. 手紙(特定記録郵便など)を送る際のポイント
    3. 実際の訪問は慎重に検討を
  3. 連絡が取れない相続人への法的対応
    1. 家庭裁判所の活用①:不在者財産管理人の選任申立てとは?
    2. 家庭裁判所の活用②:遺産分割調停・審判の流れ
    3. 重度のケースなら選択肢に「失踪宣告」の検討も
  4. 実務的に重要!相続税申告への影響と対策
    1. 連絡拒否が続く場合の相続税申告(法定相続分での仮申告)
    2. 特例の適用延長やタイムリミットの理解
  5. 専門家に頼るタイミングとその効果
    1. 弁護士・司法書士への早期相談のメリット
    2. 専門家が関わることで進行しやすくなる場面とは
  6. なぜ放置は禁物?相続人と連絡が取れないことで起きる弊害
    1. 預貯金払い戻し・不動産名義手続きの凍結リスク
    2. 手続きの長期化による価値下落や税負担の増加
  7. なぜ放置は禁物?相続人と連絡が取れないことで起きる弊害
    1. 預貯金払い戻し・不動産名義手続きの凍結リスク
    2. 手続きの長期化による価値下落や税負担の増加
  8. それでも進まないときに考えたい「相続放棄」という選択肢
    1. 相続放棄の意義と注意点(全員で慎重に判断を)

現代相続で「相続人と連絡が取れない」ときに確認すべきポイント

「相続人の一人と連絡が取れない」
それだけで、遺産分割の話し合いが前に進まなくなるケースは少なくありません。

「早く相続を済ませたい」「不動産の名義を変更したい」と思っても、全員が協議に参加しないと手続きそのものが無効になることがあるのです。
この記事では、そんなときにどうすればよいかを、できるだけ具体的に整理していきますね。
私たち“めーぷる岡山中央店”が実際に寄せられたご相談をベースに、初めての方にも分かりやすく解説します。

① 遺産分割協議が無効になるリスクを理解する

相続の場面で何より大切なのは、相続人全員の同意です。
仮に一人でも話し合いに加わっていないと、その遺産分割協議は「無効」になる恐れがあります。

たとえば…

✅ 兄弟の一人が行方不明で連絡がつかない
✅ 住所は分かっているけど、何度手紙を出しても返事がない
✅ 長年疎遠だった親族が相続人に含まれていた

このような状況では、「もう連絡できないから、残りの人だけで分けよう」は通用しません。
不動産の名義変更や預貯金の払い戻しもできなくなるため、結果として相続全体が止まってしまいます。

さらにやっかいなのは、一部の相続人が「後から無効を主張する」ケースです。
一度話がまとまっても、「自分は知らなかった」と主張されれば、手続きはやり直し。
最悪の場合は、訴訟に発展することもあります。

だからこそ、最初に全員の所在と連絡可否を確認することが最優先なんです。

できること:

  • 相続が始まったら、まず「誰が相続人なのか」を正確に確認する
  • 疎遠だった親族も含め、早い段階で連絡を取る努力をする
  • 不在の場合に備えて、法的な手段(後述)も視野に入れておく

② 相続人の所在確認は戸籍の附票からスタート

「相続人の住所が分からない」「そもそも連絡先を知らない」
そんなときに活用できるのが、戸籍の附票(ふひょう)という公的書類です。

戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから現在までの住所の履歴が記載されています。
つまり、「今どこに住んでいるか」が分かる可能性があるのです。

取得には条件がありますが、相続人の一人であれば請求できるケースが多いです。
市区町村の窓口または郵送で申請できるので、「連絡がつかないな…」と思ったら、まずこの書類を確認してみましょう。

✅ 住民票と違い、過去の住所履歴まで追える
✅ 本籍地の役所で取得する(戸籍と一緒に請求するとスムーズ)

また、最近では「マイナンバー制度」により転居の記録も一元化されつつあるため、附票の情報は以前より正確かつ有効です。

とはいえ、「住所が分かった=すぐに連絡がつく」とは限りません。
実際のところ、手紙を出しても返事が来ない、電話番号が不明といったこともあります。

できること:

  • 本籍地の市町村役場に戸籍と附票をセットで請求する
  • 発見された住所に、特定記録郵便などで連絡を試みる
  • それでも返事がない場合は、次のステップ(不在者財産管理人の申立てなど)を検討する

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まず試したい!相続人との連絡方法

「相続人の一人と連絡が取れない」と聞くと、すぐに裁判所に相談しなければ…と思われるかもしれません。
けれど、いきなり法的手段に踏み切る前に、まずは現実的なアプローチから試してみることが大切です。

意外と「住所は分かっていたけど、連絡の手段がなかった」「手紙の出し方を間違えていた」など、基本的な部分で行き違っているケースも多くあります。
この章では、相手の所在を確認し、丁寧にコンタクトを取る方法を紹介しますね。

住所の確認方法:戸籍の附票取得手順

まずは、相手が「どこに住んでいるのか」をはっきりさせることから始めましょう。
このとき役立つのが、戸籍の附票(ふひょう)という書類です。

戸籍の附票は、その人の住所の履歴がわかるもので、以下のような流れで取得します。

取得の手順

手順内容
1本籍地の市区町村役場に請求書を提出
2戸籍と一緒に附票も請求(相続人であれば可能な場合が多い)
3住所履歴が記載された附票を受け取り、現住所を確認

この附票をもとに、相手の最新の住所に連絡を試みることができます。

※注意点として、本人確認書類や相続関係を示す資料(除籍謄本など)が必要な場合もあります。
あらかじめ市役所のホームページで確認するか、電話で問い合わせると安心です。

手紙(特定記録郵便など)を送る際のポイント

住所がわかったら、まずは手紙での連絡を試みましょう。
このとき、普通郵便ではなく「特定記録郵便」や「簡易書留」といった記録の残る郵送方法を使うのがおすすめです。

なぜ記録付きの郵便がいいの?

  • 「送った」という事実が証明できる
  • 相手が受け取ったかどうかを確認できる(簡易書留なら配達記録付き)
  • 裁判所手続きに進む場合にも証拠として使える

手紙の内容は、感情的にならず、丁寧な文面で書くことがポイントです。
「相続手続きを進めるために一度ご連絡をいただけますか」というように、協力をお願いする形にすると受け入れてもらいやすくなります。

また、連絡手段(電話番号やメール)を明記しておくと、相手も返しやすいですね。

実際の訪問は慎重に検討を

「手紙では返事がなかったから、直接行ってみようか…」
そう考える方もいらっしゃいますが、訪問は慎重に判断すべき選択肢です。

特に以下のようなケースでは注意が必要です。

✅ 長年疎遠で相手の事情がわからない
✅ 相続をめぐる対立が過去にあった
✅ 住んでいるのが賃貸住宅や集合住宅で、プライバシーへの配慮が求められる

いきなりの訪問は、相手に警戒心を抱かせてしまい、今後の協議に支障をきたすこともあります
どうしても訪問する場合は、まずは手紙で「訪問予定」を知らせ、了承を得てからにするのが理想的です。

あるいは、専門家(司法書士や弁護士)を通じて連絡を取ることで、相手の反応が変わることもあります。
無理に独力で解決しようとせず、第三者の力を借りることも選択肢に入れておきましょう。

できること:

  • 戸籍の附票で住所を確認する
  • 記録付きの郵便で丁寧に連絡を取る
  • 実際の訪問は「最後の手段」として慎重に検討する

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連絡が取れない相続人への法的対応

これまで紹介したような手紙や訪問の手段を尽くしても、それでも相続人とまったく連絡が取れない…。
そんなときは、家庭裁判所を通じた法的な対応を検討するタイミングです。

とはいえ、「裁判所」と聞くだけで、難しそうと感じる方も多いのではないでしょうか。
でも大丈夫。必要な場面で、必要な手続きをすれば、相続を前に進めることは可能です。

ここでは、実際に選ばれている3つの手段をご紹介します。
それぞれの特徴と使い分けのポイントもお伝えしますね。

家庭裁判所の活用①:不在者財産管理人の選任申立てとは?

相続人の一人が長期間行方不明で、連絡も取れない。
そんなときに使える制度が、不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)の選任です。

これは、家庭裁判所に申し立てることで、行方不明の相続人に代わって財産管理を行う人を選んでもらう制度です。

不在者財産管理人のポイント

内容説明
対象者生死は分かっているが、行方不明で連絡不能な相続人
申立て先被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所
管理人の役割失踪者に代わって遺産分割協議に参加する

この管理人は「公平な判断」をするため、通常は第三者(弁護士など)が選任されます。
管理人が協議に加わることで、遺産分割を進めることが可能になります

ただし、申立てには手数料や報酬の準備が必要です。
また、裁判所から選任されるまでに1〜2ヶ月程度かかることもあるため、早めの対応がカギになります。

家庭裁判所の活用②:遺産分割調停・審判の流れ

もし相続人の誰かが協議に応じない、返事をしない場合でも、放置していてはいけません。
こうした「連絡はつくけれど話が進まない」場合には、家庭裁判所への調停申立てを検討します。

遺産分割調停の流れ

  1. 相続人の一人が家庭裁判所に調停申立て
  2. 裁判所がすべての相続人に通知し、期日を決定
  3. 相続人全員が調停に呼ばれ、話し合い(1回で決まらないことも多い)
  4. 合意が難しい場合、審判(裁判官の判断)に移行

調停や審判は、協議ができないときの最後のよりどころです。
感情的な対立がある場合でも、裁判所を通して冷静に手続きを進めることができます。

もちろん、手続きには時間と費用がかかるため、できる限り話し合いで解決するのが望ましいのですが、相手がまったく動かない場合は必要な選択肢となります。

重度のケースなら選択肢に「失踪宣告」の検討も

さらに重いケースとして、長年行方不明で生死も不明な相続人がいる場合。
このような場合には、「失踪宣告(しっそうせんこく)」という制度の利用が考えられます。

失踪宣告とは、一定期間(一般的には7年間)連絡が取れない人について、法律上“死亡したもの”とみなす制度です。

失踪宣告を利用する条件

  • 生死が7年以上不明であること(災害などでは短縮されることも)
  • 利害関係人(他の相続人など)から家庭裁判所へ申立てが必要
  • 認められると、死亡日が決定され、相続手続きが進行可能に

ただし、宣告後に本人が戻ってくることもあります。
その場合、相続財産の返還義務など複雑な問題が発生するため、慎重な判断が必要です

このように、相手の状況によっては、法的手段を使うことで前に進める方法も用意されています。
独りで悩まず、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することが、最も確実な一歩かもしれません。

できること:

  • 行方不明の相続人には「不在者財産管理人」の選任を検討する
  • 話し合いが進まない場合は「調停・審判」の手続きを知っておく
  • 生死不明が長期に及ぶ場合、「失踪宣告」も視野に入れる

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実務的に重要!相続税申告への影響と対策

相続人の一人と連絡が取れない状態が続くと、「相続税の申告はどうなるの?」という疑問を抱く方がとても多いです。
実は、遺産分割がまとまっていなくても、相続税には申告期限があるため、手続きを放置しておくと本来受けられるはずの特例が使えなくなってしまう可能性もあるんです。

ここでは、相続人が協議に参加しない場合の税務上の対応方法と、制度的な救済策について詳しくお伝えします。

連絡拒否が続く場合の相続税申告(法定相続分での仮申告)

相続税には、相続開始(被相続人の死亡)から10ヶ月以内に申告・納税を行う義務があります。
しかし、相続人の一人が協議に応じない・連絡がつかないという理由で申告を遅らせることはできません。

そんなときに取るのが、「法定相続分による仮申告」という対応です。

仮申告とは?

項目内容
対象遺産分割協議が未了でも申告が必要な相続人
方法法定相続分(民法で定められた割合)に従って、税額を仮に計算
申告内容仮の相続割合で申告・納税し、後に協議が成立すれば修正申告 or 更正の請求

仮申告をしておけば、申告期限は守れるため、無申告加算税や延滞税といったペナルティを防ぐことができます。

ただしこの方法では、小規模宅地等の特例や配偶者控除など、一部の優遇措置が適用できない場合もあるため注意が必要です。

特例の適用延長やタイムリミットの理解

「特例が使えないのは困る…」
そう感じた方も多いかもしれません。
でも安心してください。一定の条件を満たせば、特例の適用を“後から”受けられる救済制度も用意されています。

たとえば、以下のような対応が可能です。

特例適用の猶予・延長制度(事後の適用)

特例適用条件適用期限
小規模宅地等の特例申告時に未分割→3年以内に分割協議成立原則、申告期限から3年以内に再申告すれば適用可能
配偶者の税額軽減同上同様に再申告で適用可能(要添付書類)

つまり、申告期限には仮申告を済ませ、その後協議がまとまったタイミングで再申告をすればOKという流れです。

とはいえ、「あとでやればいい」と先延ばしにしていると、3年はあっという間に過ぎてしまいます。
また、申告や更正には証拠書類の保存が必要なため、初動をしっかりしておくことが重要です。

できること:

  • 遺産分割が未了でも、法定相続分での仮申告を忘れずに行う
  • 適用できない特例については「3年以内の再申告」で対応可能
  • 書類や交渉履歴は必ず保管しておく(証拠として必要)
  • 難しい場合は、税理士への早期相談も視野に入れる

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専門家に頼るタイミングとその効果

「連絡が取れない相続人がいる」
「手紙も送ったし、家庭裁判所のことも調べたけど、どう動けばいいか分からない…」

そんなときこそ、相続に強い専門家に相談することが、状況を一気に前進させるカギになることがあります。
特にトラブルの火種が見え隠れしていたり、法的手続きに不安がある場合、プロの視点はとても心強いものです。

ここでは、どんなときに専門家に頼るべきか、そしてその効果についてご紹介します。

弁護士・司法書士への早期相談のメリット

相続に関わる専門家には、主に弁護士・司法書士・税理士などがいますが、連絡が取れない相続人の対応で頼りになるのは、弁護士または司法書士です。

早めの相談で得られるメリット

  • 状況に応じた的確な選択肢を提示してもらえる
  • 書類作成や申立て手続きをすべて任せられる
  • 相手に連絡を取る際に、法的な重みを持たせられる

たとえば、相手が手紙を無視していた場合でも、専門家名義の文書が届くと、突然連絡が来るケースは少なくありません。
第三者の存在が入ることで、相手も「これは本格的に進めなければ」と意識が変わるからです。

さらに、不在者財産管理人の選任や遺産分割調停といった、裁判所を介する手続きのサポートも一貫して対応してもらえます。
自分だけで動くよりも、スムーズかつ安心して手続きを進められるのが何よりの強みです。

専門家が関わることで進行しやすくなる場面とは

具体的に、どんな場面で専門家のサポートが効果的なのか。
以下のようなシーンでは、個人で対応するよりも確実かつ迅速な解決が期待できます。

専門家の力が効く場面

状況専門家のサポート内容
相続人の所在が不明戸籍調査や附票取得の代行、所在不明者に対する管理人申立て
話し合いが進まない調停申立て書類の作成、相手との交渉代行
法的手続きに不安がある裁判所への提出書類の整備、手続き全般の代行
税務面で損をしたくない税理士との連携による仮申告・再申告のサポート

相続というのは、感情も関係する繊細な問題です。
当事者同士でのやりとりが難しいと感じたときこそ、第三者の冷静な視点が全体を前に進めてくれます。

また、専門家に任せることで、ご自身の心身の負担も軽くなります。
「どこに頼めばいいのか分からない」という場合でも、まずは地元の司法書士会や弁護士会に問い合わせることから始めてみましょう。

できること:

  • 相続手続きの初期段階で、専門家への無料相談を活用する
  • 書類の準備や裁判所対応を任せることで、ミスを防ぐ
  • 感情的な対立を防ぐ“橋渡し役”としても専門家は有効

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なぜ放置は禁物?相続人と連絡が取れないことで起きる弊害

「いつか連絡が取れるだろう」
「そのうち落ち着いて話せるタイミングが来るかも」
そう思って、相続人との連絡が取れない状態をそのままにしてしまう方も少なくありません。

でも、相続は時間とともに“状況が悪化していく”可能性が高い手続きです。
放置すればするほど、財産管理や税務面でのリスクが大きくなってしまいます。

ここでは、「連絡が取れない相続人を放置することで何が起きるのか」具体的な弊害を整理してみましょう。

預貯金払い戻し・不動産名義手続きの凍結リスク

相続では、すべての相続人の同意が必要な手続きがたくさんあります。
その代表が、銀行の預貯金の払い戻しや、不動産の名義変更です。

主な手続きと必要な書類の例

手続き必要な書類・条件
銀行口座の解約・払い戻し相続人全員の署名・実印・印鑑証明書付きの同意書
不動産の相続登記遺産分割協議書+全員の実印と印鑑証明書

つまり、一人でも欠けていれば、どちらも手続きがストップしてしまうのです。

たとえば、亡くなった親の口座に多額の残高があっても、
不動産を売却して資金に変えたくても、相続人の一人と連絡が取れなければ何ひとつ進めることができません。

こうした「凍結状態」は、相続人全員にとって大きなストレスになります。
それだけでなく、維持費や固定資産税など、財産を保有していることによる負担も増えていくのです。

手続きの長期化による価値下落や税負担の増加

手続きが進まないことには、時間的なコストだけでなく、経済的な損失も伴います。

放置によって起こるリスク

  • 不動産の劣化 → 売却価格の下落
  • 空き家管理の負担 → 維持費や固定資産税の増加
  • 特例の適用漏れ → 相続税が高額になる可能性

たとえば、相続不動産が空き家のまま放置されていると、
数年のうちに建物は老朽化し、売却しても当初の想定価格より何百万円も下がるケースもあります。

また、相続税の特例(小規模宅地等の特例など)には「3年以内」などの期限があるため、
分割協議がまとまらないまま期限を迎えてしまうと、本来受けられたはずの減税措置が使えなくなることも。

つまり、相続人と連絡が取れない状態を放置することは、
「相続全体の価値を下げる行為」にもなりかねないのです。

できること:

  • 手続きが止まる前に、できる限り早めに連絡手段を確保する
  • 法的手段を含めた対策を検討し、専門家にも相談する
  • 「いつか」ではなく、「今」動くことで財産と気持ちを守る

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なぜ放置は禁物?相続人と連絡が取れないことで起きる弊害

「相続人の一人と連絡が取れない」
この状態を「そのうちなんとかなるだろう」と放っておくと、取り返しのつかない事態に発展してしまう可能性があります。

相続の世界では、“何もしないこと”が最大のリスクです。
時間が経てば経つほど、手続きは複雑化し、財産の価値は下がり、相続税の負担も増えていく恐れがあります。

ここでは、実際に起こりやすい2つの大きな弊害について、実務目線で具体的にご紹介します。

預貯金払い戻し・不動産名義手続きの凍結リスク

相続が発生したあと、遺産を動かすためには「相続人全員の合意」が必須となります。
これは、たとえ一人でも協議に加われない人がいると、基本的な手続きが何もできないということです。

連絡が取れないことで止まる主な手続き

手続き内容必要な条件
銀行預金の解約・払い戻し相続人全員の同意・印鑑証明が必要
不動産の名義変更(相続登記)遺産分割協議書+全員の署名と実印が必要
不動産の売却や賃貸登記が完了していなければ手続き不可

例えば、親名義の土地を売却して介護費用や納税に充てようとしても、相続人の一人と連絡が取れなければ売ることすらできません

これは、「凍結」とも呼ばれる状態で、下手をすると数年単位で何も動かせないまま時間だけが過ぎてしまうケースも珍しくありません。

手続きの長期化による価値下落や税負担の増加

時間が経てば状況が好転する、ということは相続においてはあまり期待できません。
むしろ、放置によって次のような実害が発生し始めます。

代表的なリスク

  • 不動産の老朽化 → 資産価値が下落
  • 空き家管理費や税金がかさむ → 維持コストが増加
  • 相続税の特例が受けられなくなる → 税負担の増加

たとえば、相続不動産を売却するつもりが、協議がまとまらずに何年も経過してしまい、
買い手がつかなくなったり、固定資産税だけが毎年出ていく状態になってしまう…これはよくあるご相談の一つです。

さらに、相続税に関しては「申告から3年以内に遺産分割を終えていること」が特例適用の条件となるケースも多く、
長引けば長引くほど、税務的にも損をしてしまう可能性があります。

できること:

  • 一人で抱え込まず、早めに専門家や家族と相談する
  • 状況が複雑化する前に、手続きの優先順位を整理する
  • 「放置=損失」につながることを意識して行動を始める

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それでも進まないときに考えたい「相続放棄」という選択肢

どんなに手を尽くしても、相続人の一部とどうしても連絡がつかない、協議にも応じてもらえない。
そんな状況が長期間続いたとき、最終的に「相続放棄」という選択肢を検討される方もいらっしゃいます。

もちろん、相続放棄は軽々しく選んでいいものではありません。
ですが、「相続手続きを前に進めたい」「これ以上のトラブルを避けたい」という想いが強い場合には、現実的な打開策のひとつにもなり得ます。

ここでは、その意義と注意点を正しく理解しておきましょう。

相続放棄の意義と注意点(全員で慎重に判断を)

相続放棄とは、法律上の手続きを経て、相続人としての権利と義務を放棄することを意味します。
つまり、財産も借金も一切受け継がないという強い意思表示です。

相続放棄が有効なケース例

  • 相続財産よりも借金や負債の方が多い
  • 手続きが進まず、精神的・金銭的負担が大きくなっている
  • 家族全員で「関与しない」判断を一致できている

ただし、この放棄は一人だけが行っても効果が薄い場合があります。
放棄すると、次順位の相続人に権利が移るため、結局手続きは終わらない可能性があるからです。

相続放棄を選ぶ際の注意点

項目内容
手続き期限相続開始を知ってから3ヶ月以内(原則)
対象財産プラスもマイナスもすべて放棄(選べない)
次順位の発生放棄すると、子→親→兄弟姉妹へと相続権が移る

また、相続放棄をしても、「遺品の整理」「葬儀費用の負担」など、法律上の義務ではないが実務的に避けられない役割が残ることも多いです。

そのため、放棄するかどうかは家族全体でしっかり話し合い、感情面も含めた納得のうえで決断することが大切です。

専門家に相談すれば、放棄後の影響や次順位の流れ、必要書類なども具体的にアドバイスしてもらえます。

できること:

  • 相続放棄を選ぶ前に、財産全体をリストアップして判断材料を整理する
  • 家族や兄弟姉妹と「次順位の相続」まで含めて協議する
  • 弁護士・司法書士に相談し、法的な視点で最終判断をサポートしてもらう

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